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やっと額縁にいれられた。ハッカ味の飴玉みたいで、今はスーッとしている。この前のBBQの日の早朝まで眠れなくて、ずっと眠れなかったから腹いせに初めて年度末発表会の先輩の動画を見た。当日は、絶対泣くと思うよ、なんて言われたけれど素直に泣けなかった。久々に見た先輩の最後の演奏は、ただ卒業を実感してではなく、私の恋が終わったのを感じて涙がやっと出たという感じだった。やっと終わった。長すぎる私のほぼ初恋。さよなら、といった風に。今年の学祭は、遊びに来るそうだ。もう、会っても何も思わないだろう。何も思わないは少し言い過ぎかもしれない。恋愛的な意味では、と付け足しておく。夜が冷え込むようになって掛け布団を一枚足した。夜窓を開けると冷たい冷気が部屋に入ってくる。うっかり閉め忘れると風呂を出た時、露天風呂へ行く途中の道みたいな寒さを感じるぐらい季節が進んだ。私の思考のど真ん中を閉めていた先輩がその座を去って行った。ぽっかりと空いた穴はドーナッツホールみたいで、埋めたくはない。埋めたら、きっと完全に記憶も途切れ途切れになって過去の人になってしまうのだと思う。もう少しだけ、いない人の隣にたっていた自分の記憶のかさぶたを剥がしはしないけど、時間の流れに身を任せて剥がれ落ちるまでそのままで。